ひとことで糖尿病と言っても、その成り立ちにより以下のように分類されます。
1型糖尿病は、膵臓でインスリンを作るβ細胞が壊され、インスリンが殆どでなくなることにより血糖値が高くなります。生きていくためには、注射でインスリンを補う治療が必須となります。
1型糖尿病でβ細胞が壊される原因はよくわかっていませんが、免疫反応が正しく働かないことで自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つであると考えられています。自己免疫が起きている証拠の一つである自己抗体:抗GAD抗体、抗IA-2抗体などの血液検査は、1型糖尿病の診断の際に用いられます。
糖尿病でない人のインスリン分泌は、1日を通して分泌される「基礎インスリン」と、食事した際に分泌される「追加分泌」があります。インスリンが分泌できない1型糖尿病患者さんの治療は、この基礎分泌と追加分泌をインスリンの注射で補う“強化インスリン療法”が基本です。
強化インスリン療法には、ペン型のインスリン製剤を用いて1日に数回、インスリン注射を行い、基礎インスリン分泌と追加インスリン分泌の両方を補う“頻回インスリン注射療法”と、インスリンポンプという器械でインスリンを補う“持続皮下インスリン注入療法”があります。
頻回インスリン注射療法では、基礎インスリンを補うために持効型インスリンや中間型インスリンを使います。追加分泌を補うためには超速効型や速効型インスリンを使用します。注射部位はお腹や太もも、上腕、お尻など、少しずつ場所を変えて注射します。
持続皮下インスリン注入療法では、超速効型インスリンを携帯型のインスリンポンプにセットし、皮下に留置して挿入した細い管(カニューレ)からインスリンを持続的に注入する方法です。
ポンプのボタン操作で食事の前にインスリンを追加で注入し、追加分泌を補います。インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な方や低血糖を頻発する人、妊娠中や妊娠予定のある患者さんに向いています。
また、薬物療法を行うこともあります。1型糖尿病患者さんに適応のある経口血糖降下薬はαグルコシダーゼ阻害薬とSGLT2阻害薬というお薬です。
αグルコシダーゼ阻害薬は、食べ物に含まれる糖質の消化・吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を緩やかにする作用があるため、食後過血糖があるがインスリンを増やすと今度は食後低血糖になるといった場合に使用されます。
SGLT2阻害薬は2018年12月より1型糖尿病患者さんへも適応となりました(現在はダパグリフロジン:フォシーガと、イプラグリフロジン:スーグラの2種が適応となっています)。
このお薬は腎臓に作用し、血液中の過剰な糖を尿として排出し、血糖値を下げる薬です。心血管リスクの低減や腎機能保護などの良い点が報告されていますが、低血糖やアシドーシスのリスクも増えるため注意が必要です。また、脱水にも注意が必要です。
食べていけないものはありません。何でも食べて大丈夫ですが、肥満のある方では適正な体重に近づけるような食事療法をすることが望ましいです。日頃の食事について主治医や管理栄養士とよく話し合っておくことが大切です。
食後の血糖値の上昇は炭水化物が大きくかかわります。そのため、食事の炭水化物量に合わせてインスリン量を調節する方法や、逆にインスリン治療に合わせて食事の炭水化物量を調節する方法があり、「カーボ(炭水化物)カウント」と呼ばれています。カーボカウントを行うことで、血糖値が安定しやすくなります。
1型糖尿病の方は、重い合併症がなく、血糖値が落ち着いていればどんな運動をすることもできます。運動する際の注意としては、運動前後のインスリンの量や食事の量、補食の量を調整し、低血糖を防ぎましょう。
どのような方法が良いのかは主治医とあらかじめ相談しておき、運動の強度や時間に合わせてどうするかを準備しておくと良いです。
2つの理由「インスリンが出にくくなる」「インスリンが効きにくくなる」によって血糖値が高くなります。
原因は遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があると言われています。
治療の基本は食事療法と運動療法です。食事を改善し、適度な運動を生活に取り入れたうえで、必要な場合は薬も上手に組み合わせるといった治療が重要となります。
極端に炭水化物の摂取量を減らしたり、過度なダイエットをしたりする必要はありません。
糖尿病とうまく付き合っていくためにも、無理なく続けられることがとても大切です。患者さんのライフスタイルに合った食事療法をながく続けられることが重要です。まずは主治医や管理栄養士と相談し、日常生活における身体活動量(仕事の内容や運動量から推察します)と体重から1日に摂取すべき適正なエネルギー摂取量を知り、指導に従いバランスのよい食事を摂るように心がけます。
定期的に汗をかく程度の運動を行う、日ごろから体をまめに動かす、毎日十分に歩く(特に食後)ことが大切ですが、持病のある方や合併症の程度に応じて運動の強度を調整する必要があります。主治医と相談して可能な範囲で運動療法に取り組みましょう。
食事・運動療法のみで治療目標が達成できない場合に薬剤を使用します。経口血糖降下薬を複数内服しても効果がみられない場合は、インスリン療法を併用したりインスリン治療に切り替えることがあります。
妊娠中に初めて判明し、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、空腹時の血糖値は、妊娠していないときに比べて低くなります。一方で、胎盤から出るホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。
妊娠前からの肥満がある方や、糖尿病の家族歴のある方、高齢妊娠の方(35歳以上)などが妊娠糖尿病になりやすいと言われています。
妊娠初期と中期に行われるスクリーニング検査で陽性となった場合、妊娠糖尿病の診断のために75gブドウ糖負荷試験を行います。
上記3項目のうち、1つ以上を満たすものを妊娠糖尿病と診断します。
妊娠糖尿病の治療では、母体と胎児に異常が起きないように血糖値を厳重にコントロールする必要があります。食事療法、運動療法、インスリン療法などを合わせて行い、食前血糖値は100mg/dl未満、食後2時間血糖値は120mg/dl未満を目標にします。
採血検査では、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)とGA(グリコアルブミン)を測定して血糖コントロール状況を把握します。
HbA1cは過去約1-2か月間という長期間の血糖コントロールの指標であるのに対し、GAは約2週間前後という短期間の血糖コントロール指標です。いずれも血糖値が低ければ減少し、高ければ上昇します。
妊娠中はHbA1c:5.8%以下、GA:15.7%以下を目標とします。
食事療法はなるべく食後の血糖値が上がらないように、1日の食事を6回に分けて食べる”分割食”を行います。
3食の食事の2時間ほど後に3回の間食(80-160kcal)を組み合わせます。必要な総エネルギー量は身長と妊娠前の体重から計算して決定します。胎児の発育のためにもしっかりと栄養を摂ることが大切です。
妊娠中の運動療法に関しては産科の主治医の先生によく相談して運動の強度や量を決定してください。
3項目のうち1つ以上陽性でかつ妊娠前のBMI(体重÷身長(m)²)が25以上ある、もしくは3項目のうち2つ以上陽性となった場合は自己血糖測定が保険適応となります。
インスリン治療が必要となった場合も保険適応による治療となります。
糖尿病以外の病期(例えば膵臓癌)や治療薬(ステロイド薬など)の影響により血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。
また、MODY(若年発症成人型糖尿病)は若年発症(多くは25歳未満)する肥満を伴わない糖尿病の1種で、単一遺伝子疾患として発症する糖尿病です。
それぞれの原因により治療は様々です。遺伝子検査が必要な場合や希望される場合は遺伝子検査を行う医療機関へ紹介・相談させていただくこともあります。